配当は止まり、下落は直角。毎月配当の投資信託とレバレッジETFで元本が半分になった話
前回の「何を買っても上がった。株の素人が「全部上がる相場」を自分の実力だと勘違いした話」の続きです。
その前回の最後に、僕は「このあと、風が止みます」と書きました。今回が、その話です。
欲を出して買い足した毎月配当の投資信託とレバレッジETF。この2つで、元本が半分になりました。
「毎月お金が入る」という響きに、撃ち抜かれた
何を買っても上がっていたあの頃、含み益を眺めながら考えていたことがあります。もっと効率よく増やせないか。毎月お金が入ってくる商品はないか。
探すと、あるんです。毎月分配型の投資信託。持っているだけで、毎月「分配金」というお金が振り込まれる商品です。
給料のほかに、もうひとつ毎月の入金がある生活。想像して、にやけました。
仕組みは調べていません。「毎月もらえる」の一言で決めました。
上がる絵だけを見て、レバレッジETFも足した
毎月の入金を手に入れたら、次は増えるスピードが欲しくなりました。
見つけたのがレバレッジETFでした。日々の値動きを、何倍かに増幅するように設計された上場投資信託です。相場が上がる日は、普通のETFより大きく増えます。
全部上がる時代の僕には、ご褒美のような商品に見えました。
下がる日も同じ倍率で減る。その一行を、僕は読み飛ばしています。
最初は、狙いどおりだった
買った直後は、うまくいっていました。
分配金は毎月きちんと振り込まれる。レバレッジETFも上がる。口座を開くたび、自分がまた一段うまくなった気がしました。
前回とまったく同じです。答え合わせをしないまま、自信だけが積み上がっていく。
その景色は、長くは続きませんでした。
風が止まると、分配金も止まった
相場の向きが変わると、画面の色も変わりました。
まず、含み損。次に、毎月の分配金が止まりました。「毎月もらえる」が売りの商品から、もらえなくなったんです。
レバレッジETFは、もっと露骨でした。倍率は上りだけでなく、下りにも同じだけかかります。普通の下落が坂道なら、あれは崖でした。
チャートは、直角に落ちていきました。
| 買ったもの | 買った理由 | 実際に起きたこと |
|---|---|---|
| 毎月分配型の投資信託 | 毎月お金が入ってくるから | 分配金が止まり、含み損だけが残った |
| レバレッジETF | 上がるとき、大きく増えるから | 下がるとき、大きく減った |
買う前に見ていたのは、真ん中の列だけでした。
「いつかは戻る」と信じ続けた
ここで売っていれば、傷はまだ浅かったはずです。
売りませんでした。
「いつかは戻る」
根拠は、ひとつもありません。あるのは「戻ってほしい」という願望だけでした。それを予想だと思い込める程度には、僕はあほになっていました。
200倍を換金できなかったときと、待ち方が同じです。あのときは上りで、今回は下り。向きが違うだけで、根拠のなさは変わりませんでした。
チャートを見る回数だけが、減っていきました。見なければ、減っていないことにできたからです。
元本が半分になって、初めて仕組みを調べた
気づけば、元本は半分になっていました。
半分になって、僕はようやく重い腰を上げます。この商品は、そもそも何なのか。買って、抱えて、失ってから調べました。順番が完全に逆です。
そこで初めて知りました。毎月もらって喜んでいたあの分配金は、運用の利益だけから出ていたわけではありませんでした。
毎月の「配当」の正体は、自分のお金だった
毎月分配型の投信は、運用がうまくいかない月にも分配金を出そうとします。利益が足りないとき、何を削って配るのか。
元本です。
つまり僕は、自分が預けたお金を毎月少しずつ返してもらいながら、「今月も収入があった」と喜んでいたわけです。右のポケットから左のポケットへお金を移して、にやけていたのと変わりません。
タコが自分の足を食べる姿から、タコ足配当という呼び名まで付いています。それくらい有名な仕組みでした。僕は、名前すら知りませんでした。
| 僕に見えていたもの | 裏で起きていたこと |
|---|---|
| 毎月、分配金が振り込まれる | 利益が足りない月は、元本を削って配られていた |
| 給料以外の「収入」が増えた | 預けた自分のお金が、形を変えて戻ってきていただけ |
| ずっともらえるはず | 相場が崩れれば、その分配金も止まる |
右の列は、最初から目論見書(投資信託の説明書)に書いてあることです。僕がそれを読んだのは、半分を失ったあとでした。
ここで、ようやく損切りした
仕組みを知って、待つ理由が消えました。
僕が「戻る」のを待っていたものは、僕の元本を配りながらやせていく箱でした。レバレッジETFの下りの倍率とも、ここでやっと正面から向き合いました。
損切りです。半分になった元本を、そこで確定させました。
画面の前で、長く息を吐きました。悔しさよりも、「やっと終わった」のほうが大きかったです。
授業料の代わりに、NISAとインデックスを知った
損切りのあと、僕は初めて順番どおりに勉強を始めました。買う前に、仕組みを調べる。たったそれだけのことに、元本の半分を払ったわけです。
調べるうちに、NISA(投資の利益に税金がかからなくなる制度)の存在を知りました。あれだけ売り買いしておいて、聞いたこともありませんでした。
投資信託も見直しました。仕組みを説明できないものはやめて、オルカン(全世界の株にまとめて投資できる投資信託の愛称)とS&P500(アメリカの代表的な企業500社の株価に連動する指数)だけに絞る方向で、整理を始めました。
「なぜ持っているのか」を自分の言葉で言えるものだけが、手元に残っていきます。
僕がこうしておけばよかったこと
- 「毎月もらえる」を見たら、お金の出どころを確認する:その分配金はどこから出ているのか。目論見書を1ページ読むだけで、元本の取り崩しには気づけました
- 倍率は、下りにも効くと覚えておく:レバレッジ商品で見るべきは、上がった日の絵ではなく、下がった日の絵でした
- 「いつか戻る」と思ったら、根拠を紙に書いてみる:書けなければ、それは予想ではなく願望です。僕は最後まで書けませんでした
- 仕組みを説明できない商品は買わない:理解が先で、購入があと。僕はこの順番が逆でした
4つ並べましたが、上の3つは、いちばん下の1つに全部含まれています。
半分は戻らないけど、順番はここで直った
失った半分は、もう戻ってきません。
それでも、ここが僕の投資の折り返し地点でした。「誰かが良いと言ったから買う」が終わって、「仕組みがわかったものを買う」が始まった場所だからです。
あの半分がなければ、僕はいまも誰かのおすすめを順番に買い続けていたはずです。そう考えると、あれはただの損ではありませんでした。
高い授業料でしたが、授業はちゃんと受けました。
次回は、散らかっていたETFと投資信託をどう仕分けたのか、持ち物を整理して立て直した話を書きます。